式正織部流「茶の湯」の世界

式正織部流は古田織部が創始した武家茶を伝えている流派で、千葉県の無形文化財に指定されています。「侘茶」とは一味違う当流の「茶の湯」を、武家茶が生まれた歴史的背景を中心軸に据えて取り上げます。式正織部流では「清潔第一」を旨とし、茶碗は必ず茶碗台に載せ、一人一碗をもってお客様を遇し、礼を尽くします。回し飲みは絶対にしません。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

15 栄西禅師と明恵上人

栄西禅師が九州でお茶の栽培をしているという話が、京都の栂尾(とがのお)に住んでいた明恵(みょうえ)上人に聞こえました。 因みに、明恵上人は密教を修めた華厳宗の僧侶です。法諱は高弁と言います。 己に厳しい人で、インドに憧れ渡航を試みるも二度挫折し…

14 栄西、鎌倉に下る

栄西は帰国後、宋で修めた臨済禅を布教しようとしたのですが、新しい宗教は受け入れてもらえず、比叡山から激しい排斥を受けてしまいます。それのみか、布教禁止の宣下が出されてしまいます。彼は京都での布教を諦め、鎌倉で布教しようと鎌倉へ下向します。 …

13 背振(せふり)の茶

栄西は中国での禅の修行を終え、日本に帰国しました。その時、お茶の種を持ち帰り、九州の背振山(せふりやま)にある霊仙寺(りょうせんじ)の石上坊に、お茶の種を蒔きました。 背振山山系は福岡県と佐賀県の県境にある山系で、最高峰は背振山(1055m)です。 …

12 お茶を知る(2) 渋味成分

タンニン 湯温が80°を越えるとタンニンの浸出が増えます。 タンニンはカテキンが変化したものです。タンニンもポリフェノールの一種です。ワインなどにも含まれており、ワインの中に微かに感じられる渋味も、タンニンに因ります。タンニンは鉄などと強く結合…

11 お茶を知る(1) 旨味成分

茶葉は大変栄養価の高いものです。 茶杓一勺半の抹茶が、ほうれん草のお浸し一人前小鉢一つに相当する位に、抹茶には栄養がギュッと詰っています。例えば、カロテンはほうれん草(茹)の7倍、ビタミンCは3倍、Eは約10倍、マグネシウムは約3倍、鉄は8.5倍と言う…

10 お茶物語 in 中国

中国では喫茶の風習はかなり昔からありました。 約3世紀の半ばに、魏の張揖(ちょうゆう)と言う人が『広雅(こうが)』という書の中に、湖北省から四川省にかけた地方でお茶を飲んでいる、と書いているそうです。その飲用の仕方も具体的に書かれていて、それに…

9 栄西、第二次渡宋

栄西はインドへの憧れを抑えがたく、1187年に再び南宋を目指して海を渡りました。 矢張りお釈迦様が悟りを開いた土地に行き、座禅の原点に立ち返って修行をしたいと思ったのでしょうか。彼は南宋に着くと、早速インド行の願いを出します。ところが、陸路西に…

8 栄西、第一次渡宋

栄西(1141~1215年)は天台宗・真言宗・臨済宗を修めた高僧で、建仁寺の開山です。彼は南宋へ二度渡りました。 一度目は1168年です。そこで丁度在宋していた重源(ちょうげん)に出会いました。二人は共に天台山へ登り、廬山、阿育王山を巡りました。 天台山は…

7 明菴栄西、禅宗と茶の種を伝える

ベトナムやアフガニスタンやイラクで戦ったアメリカ軍の兵士の中には、今でも戦場のトラウマに苦しめられている人が多いそうです。 彼等は厳しい訓練を積み、人を殺す術を身に着けて戦場に行きました。その後、それを許さない自身の内にある人間的な魂の叫び…