式正織部流「茶の湯」の世界

式正織部流は古田織部が創始した武家茶を伝えている流派で、千葉県の無形文化財に指定されています。「侘茶」とは一味違う当流の「茶の湯」を、武家茶が生まれた歴史的背景を中心軸に据えて取り上げます。式正織部流では「清潔第一」を旨とし、茶碗は必ず茶碗台に載せ、一人一碗をもってお客様を遇し、礼を尽くします。回し飲みは絶対にしません。

46 鎌倉文化(2) 仏教・宗派多様

律令制度から封建制度へ、貴族社会から武家社会へと歴史は移って行きます。

『行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず・・・』と「方丈記」の中に書かれている通り、平安時代末期から400年以上に亘って激動の時代が続きます。宗教も又、旧来の仏教に対して、新しい宗派が次々と生まれ、旧来と新興の宗派の間で激しい摩擦が起きてきました。

新しく起こった宗派も含めて、どういう宗派があったのかを、整理しがてら見てみたいと思います。

華厳経

華厳経の基となっている経典は「大方広仏華厳経」です。教えの内容は、仏は全ての衆生を包んでおられる。また、一人の人間の中には全ての衆生との関わりが存在する。この関係性は完璧に融和し合っており、その姿は、美しい花から芳しい香気がたちのぼってくるようである、というもの、だそうです。華厳経の代表的なお寺は東大寺です。本尊は廬舎那仏。聖武天皇の発願で建立されました。

法相宗

法相宗は、自然の有様(相)の理(法)を見極めて人々の救済に役立てようとする学問的宗派です。玄奘三蔵がインドから持ち帰った経典の中にあったもので、それまでの中国仏教には、こういう傾向のお経はありませんでした。日本には西暦653年にもたらされました。この宗派は自然科学への知識が深く、土木工事や建築、薬学などへの貢献が大です。橋を架けたり灌漑用水を作ったりした行基や良弁(ろうべん)などは法相宗の代表的な僧侶です。興福寺薬師寺法相宗です。

律宗

律宗は鑑真和上によって日本に伝えられました。当時日本では勝手に僧侶になる者が多く、乱れておりました。朝廷は正式な授戒を授ける者が必要であると考え、鑑真和上を招聘しました。律宗の本尊は廬舎那仏です。お寺は唐招提寺です。真言律宗西大寺です。後に比叡山延暦寺も授戒を行う様になり、唐招提寺は次第に衰退していきます。

天台宗

中国の隋の時に、天台大師が仏教を総合的に解釈した教義に端を発しています。『一切の衆生は悉く仏性有り。十界に生くる者皆成仏する』と言い、教義と実践を重んじています。最澄がこれを日本に伝えました。比叡山延暦寺は様々な宗派を生む母胎となって行きます。延暦寺にご本尊はいらっしゃいません。

真言宗

真言宗を伝えたのは空海です。真言宗の本尊は大日如来です。大日如来を中心に描いた曼荼羅で、仏教の全体像を説明しています。真言宗では、護摩を焚いて加持祈祷を盛んに行います。本山は高野山金剛峰寺です。

浄土宗

浄土信仰は法然が浄土宗を始めるよりずっと前から人々に信仰されていました。それを浄土宗として確立したのが法然でした。阿弥陀仏に帰依して南無阿弥陀仏とひたすら念ずる事に依って救われる、と言うのが主眼です。法然の浄土宗は貴族達に受け入れられ、多くの寺院や仏像が造られ、仏教美術の世界を作り上げていきました。

浄土真宗一向宗時宗真宗踊念仏

法然の弟子・親鸞によって浄土宗が更に深化しました。

浄土宗が唱える念仏は「南無阿弥陀仏」です。

浄土真宗が唱える念仏も「南無阿弥陀仏」です。いずれも、「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽往生が出来るという教義です。

何処が違うのかと言いますと、本質的には違いはありません。親鸞は師・法然を心から尊敬していましたし、信じておりました。親鸞は亡くなる迄法然とは違う別派を立てたとは思っていませんでした。後世の弟子達がそう言ったのです。では何が違うのか、と言いますと「行」と「信」です。法然は「南無阿弥陀仏」と唱える行為をすれば往生できる、と説いたのに対して、親鸞のは、阿弥陀様は誰でも救って下さると心から信じた者が「南無阿弥陀仏」と唱えてこそ救われる、という立場です。信仰があっての念仏、という訳です。

法然親鸞の教えは専修念仏と言います。特に親鸞の教えは、親鸞の生前から弟子達の間に異議が生じており、その異議を嘆くと言う本が親鸞入滅後30年経ってから出されています。「嘆異抄」です。著者は弟子の唯円(ゆいえん)と言われています。こと程左様に別派を生じ易い教義ですので、ここでは浄土真宗から派生した一向宗時宗踊念仏浄土真宗に一括りにしました。一向宗は江戸時代に幕府の命により時宗に組み入れられました。いずれもひたすら「南無阿弥陀仏」を唱える宗派です。

法華宗日蓮宗

法華宗とは、妙法蓮華経を基にした宗派で、天台法華宗日蓮法華宗とがあります。

天台法華宗比叡山延暦寺の方を指し、日蓮法華宗は、日蓮宗と呼び習わしております。また、日蓮宗とは称さないで法華宗と言っているお寺もあります。(本門流)

日蓮宗は専修念仏で「南無妙法蓮華経」を唱えます。本山は久遠寺です。