式正織部流「茶の湯」の世界

式正織部流は古田織部が創始した武家茶を伝えている流派で、千葉県の無形文化財に指定されています。「侘茶」とは一味違う当流の「茶の湯」を、武家茶が生まれた歴史的背景を中心軸に据えて取り上げます。式正織部流では「清潔第一」を旨とし、茶碗は必ず茶碗台に載せ、一人一碗をもってお客様を遇し、礼を尽くします。回し飲みは絶対にしません。

11 お茶を知る(1) 旨味成分

茶葉は大変栄養価の高いものです。

茶杓一勺半の抹茶が、ほうれん草のお浸し一人前小鉢一つに相当する位に、抹茶には栄養がギュッと詰っています。例えば、カロテンはほうれん草(茹)の7倍、ビタミンCは3倍、Eは約10倍、マグネシウムは約3倍、鉄は8.5倍と言う具合です。

お茶にはビタミン類以外にも、テアニン、カテキン、タンニン、カフェイン、サポニンなどの成分があります。大雑把に分けて次の様な五つの味の成分に分かれます。

テアニン   旨味成分

カテキン   渋味成分

タンニン   渋味成分

カフェイン  苦味成分

サポニン   苦味とえぐみ成分

 

テアニン

テアニンは玉露から発見されたアミノ酸の一種で、グルタミン酸の仲間(誘導体)です。

テアニンは熱に対してとても弱いので、テアニンの旨味をお茶から引き出すには、お湯の温度を50℃以下にするのが望ましいです。

テアニンを摂取すると、脳に作用してα波という脳波を出すそうです。α波はリラックスすると出て来る脳波と言われています。睡眠の質を高め、また、免疫系に働きかけて体力を増進させる、とも言われています。

 お茶の木は、地中深く根を下ろしているそうです。その長さは4~5mにも達するとか。根を深く張って地中の窒素を集め、テアニンを生成します。

テアニンは根から幹へ、さらに葉へと移動します。葉が日光を浴びるとテアニンが化学変化を起こしてカテキンに変わります。カテキンはお茶の渋味成分です。

玉露は、萌え出たばかりの若葉に寒冷紗や藁を被せ、テアニンが渋味成分のカテキンに変化しない様に、日光を遮ります。そして、葉の成長に合わせて遮光率を徐々に上げ、収穫するころは遮光率が90%にも達するそうです。

似たような作り方でかぶせ茶があります。かぶせ茶は、お日様の下で普通に育て、収穫1週間くらい前から遮光します。

煎茶は芽が出てから収穫までずっとお日様を浴びて育ちます。

 

カテキン

煎茶の様にお日様をたっぷり浴びて育った茶葉には、カテキンがたくさんあります。

植物は地中からの栄養と日光で光合成を行い、葉緑素を作ります。日光は植物にとってとても大切なものですが、困ったことに日光には有害な紫外線も含まれており、紫外線は細胞を破壊してしまいます。その紫外線の破壊から身を守ろうと、植物自らが作り出す防御物質がカテキンです。

カテキンポリフェノールの一種です。抗酸化作用があり、殺菌作用も有ります。

カテキンの有用性は様々な所で取り上げられ、それに関連した商品も出回っております。それらの効用を纏めてみると、次の様になります。

①抗酸化作用がある ②抗菌・抗ウィルス作用がある ③抗がん作用がある ④コレステロールの吸収を抑える ⑤血糖値を下げる

などなどがあります。

テアニンは旨味の素だし、カテキンは健康の素だし、そんなに良いものならば、茶ノ木に窒素肥料を大量に施して、うんと含有量を上げれば良いのに・・・・と思う所ですが、実はそうは問屋が卸しません。窒素肥料を多く施肥すればするほど旨味が増しますが、それには限度があり、肥料が濃過ぎると浸透圧の関係で根を傷めてしまいます。又、窒素が地中の微生物と反応して硝酸性窒素亜硝酸性窒素に変化しますので、それらが土壌に溶け出して、やがて河川汚染の原因にもなります。この問題を解決する為、環境省水質汚濁防止法を出しています。そのような訳で施肥には数々の規制があり、現在では、昔ほど窒素肥料は使われていません。

甘味のある旨いお茶をお好みならば、低い温度でゆっくり淹れると良いでしょう。

渋味のあるスッキリとしたお茶をお好みならば、高い温度のお湯で淹れると良いでしょう。

 茶葉が日光を浴び、緑が濃くなるにつれ、カテキンがタンニンに変化します。