式正織部流「茶の湯」の世界

式正織部流は古田織部が創始した武家茶を伝えている流派で、千葉県の無形文化財に指定されています。「侘茶」とは一味違う当流の「茶の湯」を、武家茶が生まれた歴史的背景を中心軸に据えて取り上げます。式正織部流では「清潔第一」を旨とし、茶碗は必ず茶碗台に載せ、一人一碗をもってお客様を遇し、礼を尽くします。回し飲みは絶対にしません。

170 織部の美

古代遺跡から出土する陶片の中に、織部焼きの様な、歪(ひず)んで、不定形で、凸凹した様な器を見たことがありません。 勿論、完全な形で発掘される陶器は稀で、大概のものは破片でしかないのですけれども、それでも、それらの破片を見る限りでは、表面が滑ら…

169 佐介(織部)覚醒

人は誰でも才能を持っています。無能な人はおりません。ただ、その才能は世間的な尺度で計る才能では無く、全く別の尺度の才能です。婆が言う才能とは、好奇心の才能を言います。 生まれて間もない赤ん坊は、ベッドでじっとしていながらも、動くものに興味を…

168 佐介(織部)は茶の湯嫌い

明けましておめでとうございます。 当地では風も無く、明るい日が差す穏やかな元日の朝を迎える事が出来ました。有難い事でございます。 さて、このブログ、「古田織部はウニのようです」と書き始めて1年と9か月になります。 古田織部はウニのようです。 海…

167 利休切腹(3) 茶の湯の覇道

町工場の社長が、巨大コンツェルンの総帥達と肩を並べて事業を展開して行くには、どうしたら良いか? いや、更に言うならば、彼等より抜きん出て上に立ち、彼等を思う様に牛耳(ぎゅうじ)りたい。 ビジネス風に譬(たと)えれば、田中与四郎の志はそこにありまし…

166 利休切腹(2) 売僧(まいす)

昭和末期から平成の初期、日本はバブル景気に沸きました。 東京の都市再開発で不動産バブルが沸き起こり、地上げ屋が跋扈(ばっこ)しました。有り余った資金は投資に流れ株式が高騰、ゴルフ会員権、高級乗用車、果ては女性達があられもない衣装をまとって、お…

165 利休切腹(1) 木像事件

利休の突然の賜死は多くの謎を含んでおり、未だに解明されておりません。謎を解き明かそうと、多くの方が説を唱えております。それらを読む内に、一つ気が付いた事があります。それは当時の人の人権意識が、現代人とは全く違う事を、見落としている点です。 …

164 権力の相剋

釜の前に独り坐し、有るか無きかの幽かな風を、立ち昇る湯気の揺らぎに感じながら、何時も通りの手順で茶を点てて行く。呼吸が整い、心が鎮まり、一盌を服して瞑目。明日は戦場ぞ・・・ 人付き合いの茶の湯では無く、武将が内面で求めていた茶の湯は、そのよ…

163 茶正月 一客一碗

11月、茶の正月。炉開きの季節です。 何時の間にか季節はしずかに忍び寄り、婆の住まう団地の庭の、ハゼの木の樹冠が少し赤く色付きはじめました。三階のベランダを超えるまでに大きく育ったそのハゼの木は、秋になると鳥たちの楽園になります。ハゼの褐色の…

162 利休と秀吉(3) 朝顔

利休の庭の朝顔の花が大変見事だと評判が立ちました。それを聞いた秀吉、是非とも見たいものだと思い、利休に朝顔を見たいと朝の茶事を所望します。家臣の話から、垣根一面に朝顔の花が咲いている様子を聞き、期待に胸を膨らまして訪ねましたが、残念ながら…

161 利休と秀吉(2) 対立する美意識

昔、黄金の茶室を見ました。MOA美術館で・・・ とても綺麗でした。見た印象は、思ったより渋くて落ち着いた感じがしました。事前の予想では、薄っぺらなキンキラキンの成金趣味かと想像していました。ところが、どうしてどうして、光の威厳に圧倒されました…

160 利休と秀吉(1) 茶室のサイズ

秀吉が関白太政大臣になり、九州が平定され、平和が訪れました。 鎌倉時代から室町時代、応仁の乱を経て戦国時代と、戦に次ぐ戦でおよそ400年間戦い続けた世も鎮まり、派手好きの秀吉の気風そのままに、安土桃山文化が花開きました。 安土桃山文化は信長・秀…

159 九州平定

昔、山下清と言う貼り絵を得意とする画家がおりました。その技は息を飲むほど精緻。色彩は美しく、婆は彼の絵が大好きでした。その彼が口癖にしていた言葉があります。それは「兵隊の位で言えば・・・」です。彼は、相手が偉いか、偉くないかを兵隊の位で判…

158 キリシタン(2) 仏教との衝突

今、旧統一教会と政治家の関係が問題視され、多くの場で議論されていますが、この問題は何も今日に限った事では無く、宗教が及ぼす政治や経済、或いは権力への影響は昔から随分言われてきました。 中世に日本にやってきた宣教師達もまた、彼等の個人的信仰心…

157 キリシタン(1) ザビエルの道

茶の湯とキリシタン、一見何の繋がりも無いように見えます。が、実は大有りです。 茶の湯を論ずるならば、先ずは禅宗でしょ、と、こう来るのが普通です。けれども、千利休が深化させた侘茶には、キリシタンの影響が多々見受けられ、避けては通れない問題です…

156 武野紹鴎と今井宗久

人間万事金の世の中と申しましょうか、戦に次ぐ戦で戦費増大する中、結局勝つのは経済力のある陣営です。勝つ為に、富を手に入れる、その富が堺に蓄積されている・・・信長は真っ先に堺に注目します。 1557(弘治3.09.15) 織田信長は津田宗及の茶会席に初めて…

155 日吉丸

末は博士か大臣かと、男の子だったら期待もされたでしょうに、オギャーと生まれて「何だ、また女か」と言われた婆。お生憎(あいにく)様、女で悪かったねぇと、心の中で啖呵(たんか)を切りながら、それなら男の子になってやろうと、お小遣いで金槌と鋸を買っ…

154 名物狩りと松井友閑

生きるか死ぬかは運次第の戦国乱世。きつい・汚い・危険の3Kの最たる職業の武士達。 血塗られている日常で得られるわずかな平穏の中に、己を取り戻そうとする時、彼等はそこに心の平安を求めるのでした。それが禅であり、茶の湯であり、能や連歌や諸芸の世界…

153 人間五十年 下天の内を・・・

人間五十年 下天のうちを比ぶれば 夢幻の如くなり 一度(ひとたび)生を享(う)け、滅せぬもののあるべきか ご存知、信長の愛した幸若舞「敦盛」の一節です。 桶狭間への出陣を前にして、人の寿命は五十年、この世にオギァーと生まれたからには、必ず死ななけれ…

152 本能寺に消えた茶道具

形あるものは壊れ、生きるものは滅し、会うは別れの始まりとか。 俗人の悲しさ、この教えに頷くも執着を拭い去れず、本能寺の猛火に消えた数々の茶道具が、今もし目にする事が出来るならば、どれほどの眼福に浸れるものかと、唯々残念でなりません。 信長が…

151 姫路の狼狽(本能寺の変)

「光秀謀反」「上様討死」の驚天動地の報せは、全国に激震をもたらしました。 戦国期から江戸時代初期までの様子を著した本に「武功夜話(ぶこうやわ)」があります。その中に「明智日向守謀反の事」という条があり、その混乱振りが書かれています。 その部分…

150 信長年表6 本能寺の変

前号では、室町幕府滅亡、浅井・朝倉滅亡、伊勢長嶋一向一揆討伐、長篠の戦いで織田・徳川連合軍勝利、そして、1576年3月25日(天正4年2月25日)に信長が安土城に入ったところまでを年表にしました。 今号は、手取川の戦い、三木城の戦い、鳥取城の戦い、高松…

149 信長年表5 包囲網(2) 幕府滅亡・長篠合戦

「式正織部流「茶の湯」の世界」と標榜しながら、武士の歴史ばかりを述べているなんて、表紙と中身が違うではないかと、お叱りを受けそうです。が、式正織部流は武家茶です。NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見れば分かる様に、或いは某国の軍事独裁国家の…

148 信長年表4 包囲網(1) 姉川合戦・比叡山焼打

前項に引き続き、信長の年表を書いて行きます。彼を取り巻いていた政治的な環境、軍事的な動きなども合わせ見て行きたいと思います。 ※ 年表表記について 〇西暦を前にその後に和暦を( )内に記す。 〇元年の場合は1と表記。(例:弘治元年→弘治1) 〇年だけが…

147 信長年表3 二つの上洛戦

前項に引き続き、信長の年表を書いて行きます。彼を取り巻いていた政治的な環境、軍事的な動きなども合わせ見て行きたいと思います。 ※ 年表表記について 〇西暦を前にその後に和暦を( )内に記す。〇元年の場合は1と表記。(例:弘治元年→弘治1) 〇年だけが分…

146 信長年表2 初陣~桶狭間

前項に引き続き、信長の年表を書いて行きます。彼を取り巻いていた政治的な環境、軍事的な動きなども合わせ見て行きたいと思います。 ※ 年表表記について 〇 西暦を前にその後に和暦を( )内に記す。 〇 元年の場合は1と表記。(例:弘治元年→弘治1) 〇 年だけ…

145 信長年表 1 誕生前から元服迄

織田信長と言えば、知名度抜群の戦国武将です。学校で習うのは勿論の事、小説で、映画で、テレビのドラマで、そしてゲームで、頻繁に取り上げられています。彼の生涯についてはそれ故、御存じの方が大勢いらっしゃいますので、ここでは敢えてそれを書かず、…

144 信長と天下布武

「天下布武」とは穏(おだ)やかではない。全く、信長は自分を何様だと思っているのか、天下を統(す)べるのは俺様だ、俺以外いない、とでも思っているのか、と咬みつきたくなる様なこの言葉。彼の戦歴や成し遂げた事業を列挙してみると、成程そう思っても仕方…

143 会合衆 茶の湯三宗匠

婆が若い頃、会合衆を「えごうしゅう」と読むと学校で習いました。今は、「かいごうしゅう」と読むのですね。検索して初めて知りました。このごろ時々、昔習った言葉が今では通用しなくなったという事態に遭遇します。昭和は昔に成りにけりです。やれやれ、…

142 茶の湯(4) 紹鴎の茶

みわたせば花ももみぢもなかりけり 浦のとまやの秋の夕暮れ 藤原定家 晩秋を詠んだこの歌を思い出す時、ふっと、もう一つの詩を思い浮かべる事があります。それは、フランスの詩人・ヴェルレーヌの詩の「落葉」です。上田敏の名訳で、ご存知の方が大勢いらっ…

141 茶の湯(3)  利休以前

茶の湯や茶道には色々な流派があります。どういう流派があるかをご紹介します。 ここでは流名のみで、流内にある各派は省略し、また、明治以降に興った流派も省略し、古い順から並べました。 珠光流(じゅこうりゅう)・小笠原家茶道古流・志野流・紹鴎流(じょ…